現実主義者の憂鬱

PREV | NEXT | INDEX

第4話A

「どうしよう?」
 いや、ホントに。
 私はベッドに寝転がり、白い天井を見つめたままこう呟いた。
 先ほどのことがあり、大変私は困っている。
 どうやら、赤坂って男はなかなか繊細な心を持っているらしい。
 あんなことぐらい、笑い飛ばしてすませばいいのに。
 しかし、よくよく考えてみると、赤坂が友達と話しているところなんて見ていない。新学年になり、まだ誰とも言葉を交わしていないなんて絶対におかしい。おかしすぎるよね。
 私はベッドから飛び起きると、机の上にある携帯と手に取り由喜に電話した。
「もっしもーし、由喜だよぉ」
 元気そうな声が聞こえる。私は由喜に赤坂のことについて尋ねた。
「え?何?そーかぁ、香奈も赤坂君の魅力に惚れたかぁ。がんばりなよ、応援してるから!」
 などとかなり勘違いな発言をしていたが、私はそんなことはすべて無視し、赤坂の情報をすべて聞き出した。さすが由喜。学年1の情報屋。
 
 分かったことが多くある。
 彼は小さい頃、親に虐待を受けていたそうだ。かわいそうに。自己防衛のために剣道を始め、そして今では親は改心した。竹刀で殴ったのかな?
 まぁ、そんな物騒な妄想はよそう。
 そして、中学に進学したらしい。その頃からかなりもてていたそうだ。そりゃあ、あの顔だ。きっと中学生の頃はあどけない上にあの顔だから、甘いマスクに女の子はメロメロだろう。
 しかも、剣道で全国ベスト8まで勝ち上がる。それで、校内での彼の知名度は一気にアップ。あっという間に全校の有名人&モテモテ男と化してしまった。
 しかし、残念ながらそんなやつが同じ男友達からよく見られるわけがない。ちなみに彼にはその頃、仲のよい男友達はいなかったそうだ。
 一気に彼は一人になる。彼の人気だっていつかは衰えてくるのはあたりまえだ。彼には友達はいなくなってしまった。
 
 そして、高校生になる。
 現状は変わらない。
 高校でも、いろいろと有名になる。それは私だって知っていること。
 きっと友達だっていないのだろう。
 
 私は胸がズキリと痛むのを感じた。
 もしかして、赤坂は私と同じクラス委員になったから少し期待してたんじゃないのか?
 もしかして、友達ができるかもしれないと喜んでいたのではないか?
 私の胸はさらに痛む。ズキリズキリ。
 
 ―そうだ!―
 
 私は思う。
 赤坂と仲良くしてやればいいんだ。
 至極当然な答え。しかし、もっとも実行するのが難しい答え。
 当たり前。彼ほど付き合いにくい人間はなかなかいないであろう。てか、私の周りには皆無だ。全くいない。
 しかし、私はくじけない。必ずや、赤坂がみんなとなじめ、笑顔を見せてくれるその日まで頑張るのだ!
 ………なんだか最初と考えていることが違うけど、まぁいいか。
 とりあえずだ。
 私は彼と仲良くしなければいけない。うん。
 学校は、もちろん明日もあるが、今すぐ何か行動を起こさないとだめな気がする。うん。そうだ。
 私は由喜から入手した彼の携帯メールアドレス(一体どこから手に入れたのか不明だ)を使い、赤坂に謝ることにした。

 
 突然のメール失礼します。大山香奈です。♪
 さっきはごめんね。あれ、本心じゃないからね。ホントだよ?
 クラス委員。一緒に頑張ろう★これから1年間だからね。仲良くしようよ☆
 それと赤坂君、いつも一人でいるんだって?もっとクラスのみんなと仲良くしようよ!
 じゃあ、また明日♪


「送信………っと」
 送信完了画面が出てくる。私はふぅ、と息を吐く。先ほど送ったメールの内容を思い出す。
 ………
 かなり馬鹿くさい。つーか自分らしくない。
 いつもの私ならズカズカと面向かって言うんだけどなぁ。はっはっは、と小さく笑ってみる。
 メールの内容を思い出す。
 アッハハハ!
 なんだか笑えてくる。つーかもう笑ってるけど。
 赤坂はどんな反応をするのだろうか?
 喜ぶ?
 怒る?
 悲しむ?
 削除する?
 顔を赤らめる?
 そんななの知るか!
 まぁ、悪い印象は持たないだろう。…私の勘だけどさ。
 私は返信が来ることを信じ、携帯をそっと机の上に置いた。
PREV | NEXT | INDEX
Copyright (c) 2005 All rights reserved.