現実主義者の憂鬱
第1話B
僕は、昔からとびっきり不幸だった。
小さい頃は、現実を見ずにパチンコと酒に明け暮れる僕の両親のせいで本当に苦労した。
パチンコと酒に溺れる両親は息子の僕なんてほったらかしだ。
なので、小さい頃から毎日のように家事をこなし、親の世話をした。
だけど、親は酔っぱらっているのでいつも僕を殴った。
親にぶたれるのが怖くて、剣道を必死で練習して、僕は自分の身を守った。
とりあえず、自分一人で何でもこなした。親は役立たずだし、役所は何もしてくれないしさ。
そして、どうやらこの世界では頼れるのは自分だけらしい、と感づいたのは中学の頃だった。
その頃は、なんとか親も働くようになっていて(竹刀調教のお陰)僕はしっかり勉強に励んでいた。
安心して学校に行っていた。部活にもせっせと精を出し、恋もしてみようかなぁ、と考えていた頃である。
僕は剣道の大会で全国ベスト8まで上り詰めた。その後、僕の元には毎日のようにラブレターが来た。
元々、そういう手紙は多かった。どうやら、剣道で全国ベスト8まで上り詰めたことによって、僕の知名度が一気にアップしたらしい。
恋もしてみようかなぁ、と考えていた矢先のことなので、僕は舞い上がるような思いで毎日を過ごしていた。
が、しかし、僕はとびっきり不幸なのである。こんなうまい話があるわけがない。
その大量のラブレターが原因で、僕はクラスの男子から孤立してしまった。
孤立したと感じるまで、何故僕は彼らの冷たい視線に気がつかなかったのだろう、と今更悔やんでみても無駄である。
だが、よくよく考えれば何でそんなことで彼らが僻むのかが分からなかった。
つーかお前ら、最低、低脳。
究極の人間不信に陥り、そしてあの結論だ。
―この世界では頼れるのは自分だけ―
その後は、完璧に他の人たちとは表面だけの付き合いを行った。
どうせコイツらなんか頼りにならねぇ、信じられねぇ。とか思いながら。
気がつけば高校生になっていた。
しかし、一度染みついた性格はそう簡単には直らない。高校になったら心機一転などいうことができるはずもなく、やっぱし中学同様、頼りにならねぇ、信じられねぇ。と思いながら人と接してしまった。
それが原因か、それとも剣道でインターハイで優勝したのが原因か知らないが、僕の不幸は高校になっても続くようだ。
インターハイから1ヶ月後、アンラッキーにも我が校の不良約5名に目をつけられてしまった。
もちろん、目をつけられたら速攻喧嘩なのが不良のたしなみ(実際どうなのか知らないが)例外なく、彼らは僕に殴りかかってきた。
一方的にボコボコとやられるわけにはいかない。だって殴られたら痛いんだもの。
僕は自分のみを守るために、とりあえず相手してやった。
相手のパンチをさらりとかわし、みぞおちに蹴りをぶち込む。手は怪我したくなかったので使わなかったけど。
気がつけば5人とも、アッサリと伸びていた。
やばいなぁ、と思いながら彼らの体を確認した。まぁ、骨折とかしたやつはいなかったので助かったけど。良かった停学とかにならなくて。
だけど、やっぱりそのことは一気にみんなに広まり、さらに僕は孤独に。今や近づく者おらず。触らぬ神に祟りなし。
さらにさらに、だ。
硬派・真面目
この2点コンボの威力は最強であった。
この2点に上記のこと。女の子達は僕を見て、溜息をつくか逃げるか。男は俺を見たら、逃げるかおびえるか。勘弁してほしいぜ。
人間不信に陥った僕の生み出したこのイメージが払拭できる日は来るのだろうか。甚だ不安である。
それに、孤独に慣れきったとはいえ、さすがに寂しい。
せっかくの高校生活。
一度きりの高校生活。
本当にこのままでいいのかと自問自答する。
そんなこんなで、ホント醜い現実を今まで見てきたわけである。それも小さい頃から延々と。
どうやら人間は、現実を見つめすぎると、現実的な考えしかできなくなるらしい。脳の根底から俺は現実的思考に書き換えられていた。
お陰で、すっかり独り身の寂しい現実主義者になってしまった。
僕は今日も、窓の外を見ながら溜息をつく。
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