不幸の理由。作者の溜め息。

その6

「んー、面白かったねぇー♪」
「そだな」
 映画館を出て、作者は大きく背伸びする。何て言うか、無駄に疲れた。かなり疲れた。特にててて、手を重ねられた時なんて特に!
 女の子に免疫がないってこう言うことだろうか。っていうかなら何で和美と付き合っていたんだよ、俺。
「さて、どこ行く? もう昼時だし、飯食うか?」
「んー、そだね。私もお腹空いたし。うん、何か食べよう」
 そう言うことで、どこかで昼食をとることにした俺と作者。繁華街には飲食店が多い。
「どれにしようかな〜」
「まぁ、ゆっくり選んだらいいよ」
 まだドキドキが抜けない俺。現在進行形で繋がれている手がさらに俺の顔の温度を上げる。熱い! 冬なのに熱いぞ!
「あ、ここがいい!」
「何、どこ?」
 作者が指さした方を見る。って、あれマ○ドじゃん! ピエロみたいなやつがイメージキャラクターの店じゃないですか!
「あ、あんなところでいいの?」
「うん。ほら、物語でも学生とかよくここで食事させるんだけどね。私も一回食べてみたいなーって思って」
 まぁ、何て言うかそう言うことね。つまり、この人は自分の創った世界でみんながよく食べる飲食店で食事がしたいと。
 とりあえずまぁ、店内に入る俺たち。中はサラリーマンとかOLでかなり混雑しており、空いてる席は見あたらない。昼時だしね、仕方ないか。
「人多いし、他行こうぜ」
 こう言うときは、もっと贅沢な店に行きたい俺。何て言ったって、俺とデートしてるのは世界の創造者。お金なんて速攻出せるお方なのだ。もっとリッチな食事ができる。そう思うだけでヨダレが垂れてくるぜ。
「いやよ。私はここで食べたいの」
 またも鞄から原稿を取り出し、さらさらと万年筆で書いていく作者。すると……。
「わー、店内の客がみんな消えたー!?」
「よし、これでオッケー♪」
 一瞬にして店内の客が消え去ってしまった。ああ、あそこでタバコ吸ってたおじさんは。化粧を直していた不良女子高生は。がははと馬鹿笑いしていたOL。彼らがみんな、目の前で一瞬にして消えてしまったのだ。
「さぁ、何食べようかなぁ〜」
 実行犯は至って普通のご様子。何て言うか、見てはならぬものを見てしまった的な状況。これは他言無用だね。うん。
 悩みに悩んで作者はビッグマックにコカコーラ、ポテトの布石の注文。俺はそれほど腹が減ってなかったのでハンバーガーにコーヒーだ。
 席に座るやいなや、速攻小さな口をめいっぱい開けてビッグなハンバーガー、ビッグマックを食べ始める作者。見ていてかなり微笑ましい光景だが、周りに客が一人もいない状況は少々恐い。否、不気味だ。
 俺も平然を装いながら黙々と食べる。何故沈黙なのかというと作者が夢中に食っているからで、俺は気を遣って何も話しかけていないのだ。うんうん、俺って気配りできるいいやつ。
 しかしながら、作者の表情はあまり楽しそうなものじゃないことに、これまた俺は気づいていなかったりする。
 あっという間にすべてを平らげ、コーラをずずず、とすする作者。
「どう? 美味かったか?」
「うーん、微妙。あんまり美味しくなかった」
「やっぱ、そうか」
 期待通りの答えをアリガトウ。俺もここのハンバーガーはあんまり好きじゃない。マズイし。いや、めちゃくちゃマズイってわけじゃないけど安さを追求しすぎて味を忘れてしまったようか感じがするし。
 まぁ、そんなことはどうでもいい。とりあえず次にどこ行くかが問題だ。まだまだ一日は残っている。作者のご希望を聞きいて行き先をさっさと決定せねば。
「で、次はどこ行きたい?」
「うんとね、じゃあ遊園地行ってみたい」
「遊園地ですか?」
「うん」
 ということで、次の行き先けってーい。場所は三駅向こうのヘボラパーク。
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