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Every Day!!

3-7

 枕を抱えたまま、ベッドにうずくまる花梨。
 ドキドキした鼓動は収まりそうになく、顔は真っ赤っかだ。
 さっき、大地君に言ってしまいそうになった。
 今まで、かなり際どい発言だっていろいろとしてきたが、あれほどまでストレートに言いそうになったのは初めてだった。
 自分の気持ちが、抑えきれないものになってきていることに花梨は薄々気づいていた。
 きっと、その原因は彼の周りにいる人たちの所為だろう。
 大地君は、魅力的すぎるんだ。
 花梨は枕に顔を埋める。大地の周りには、確かに女の子はかなり多かった。いや、それは一目瞭然だ。ほとんど、彼はハーレム状態を形成していると言っても過言ではない。
 でも、それは本人の意志で行っているわけではない。彼に惹かれ、そして近づいていく者が多いのだ。
 花梨は、クラス内での大地の姿を思い出す。常に誰かと一緒にいて、そして何かにつけて頼られている大地。
 ある意味のカリスマ性を保持している彼に、花梨も例外なく惹かれた。
 日に日に大きく膨らむ彼への想い。いつ、どこで爆発するかもしれない時限爆弾を抱えたような気分だった。
 どうすればいいのか皆目見当がつかない。
 いや、きっと心の奥底では気づいている。
 告白すればいい。
 そうだ。彼にこの想いを伝えれば、きっと楽になる。
 でも、その後は?
 告白した後、彼はどんな表情をするだろう。苦笑いを含んだ、ちょっと困った表情をする大地が脳裏に浮かぶ。
 人に囲まれているにもかかわらず、大地がどこか距離を置いていることにも花梨は気づいている。
 何か、きっと彼に何かあったんだ。
 思い出すのは今日の出来事。転校生の佐織を見たとき、大地の表情は憂いと、そして少しばかりの驚きが含まれていた。話を聞くと、彼女と大地は元同級生だということだ。
 ただの同級生が転校してきて、あんな表情を普通は浮かべるだろうか?
 いや、浮かべないだろう。彼ならきっと、笑顔でまたクラスメートになったな、なんて言うに決まっている。
 何かがあったのだ。あの佐織という女の子と大地の間に。
 ぎゅっと、枕を抱きしめる。
 どうすればいいのか。何をすればいいのか。
 花梨は、全く分からないでいた。


「おはよ――って、なんちゅー顔だよ、お前は!」
 俺の顔を見るやいなや、和彦は実に失礼なことを述べてくれた。こんにゃろ。ピンポイントで眉間突くぞ。
「嫌な夢見た」
「あー、そうか」
 そうだ。実に嫌な夢だった。あのときの夢を見たのは実に久しぶりだった。
 目が覚めたら、汗で全身びっしょりで、息がかなり荒かった。
 何故か隣に恵里がいて、「お兄ちゃん、えっちな夢見たの?」とか言ってきたのでとりあえず部屋からけり出した。最近の中学生はなんてことを言うんだ、全く。
 体はひどくだるくて、今日は朝練に参加できなかった。初めてのさぼりだ。
「ま、とりあえず顔洗ってこいよ。顔。スッキリするから」
「そーする……」
 トボトボとトイレに向かう俺。朝の廊下は騒がしい。あちこちからいろんな声が聞こえてくる。
「よっ! なーに、辛気くさい顔してるのさ!」
「あ、佐川さん」
 背後から俺の肩を小突いてきたのは球技大会以来、なんか仲良くなった佐川百合子(さがわ ゆりこ)さん。バスケット部に入っている元気娘だ。ちなみに、球技大会では一緒になかなかいいところまでいった。
「いや、ちょっと寝不足で顔洗いに行くとこ」
 もちろん夢の話は伏せておく。迂闊にできる話じゃないからだ。
「へー、そうなんだ」
 何となく、佐川さんの視線がキョロキョロとさまよっている気がする。ん? どうしたんだ?
「佐川さん、どしたの? キョロキョロして」
「え! い、いや、べべ、別に何にも」
 明らかに挙動不審だが、まぁ、気にしないでおこう。
「じゃあ、俺は顔洗いに行くから」
 と言って、俺はこの場を去ろうとしたのだが、
「ま、待って!」
 と、佐川さんに引き止められた。
「何?」
 振り返り、佐川さんの方を見る。心なしか頬が赤い気がする。ホントにどした、佐川さん。
「え、えっと、今度の日曜日って、空いてる?」
「日曜日?」
「う、うん」
 何故こんなことを聞くのだろうか。とりあえず、日曜日の予定を思い出してみる。そーいえば何にもない。
「別に何もないけど」
「そ、そう! じゃ、じゃあさ……」
 少し佐川さんは俯いてモジモジしていたが、意を決したかのように顔を上げて言った。
「わ、私とどこか遊びに行かない!?」
 なんか、佐川さん、顔真っ赤なんですけど。
 ていうか、コレってもしかしてデートのお誘い?
 そんなことが脳裏をよぎる。
「それって、二人で?」
 佐川さんは激しく首を縦に振った。どうやらイエスのようだ。
 さて、どうしようか。
 実はと言うと、今のところ誰とも遊びに出たりしたくない。今の気分では、きっと俺自身も楽しめないし、相手だって楽しめないだろう。誘ってもらったのなら、相手に失礼だ。
 だけど、見たところ彼女は必死に俺を誘ってくれた。それを断るのも、失礼に当たるんじゃないのか。
 別に、遊びに行くくらいいいか。気分転換になるかもしれないし。うん。
「分かった。いいよ」
 そう答えると、佐川さんは満面の笑みを浮かべた。
 てなわけで、今度の日曜日は遊園地に行くことになりました。
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