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Every Day!!

3-11

「ぐぇ!」
「きゃ!」
「イタッ!」
 と、突如現れた行き止まり。床が消え、体が浮いたかと思えば、その後は重力に従って落下して、見事床に尻をぶつけた、と。痛い。結構痛い。暗がりの中、隣で同じように痛がっている花梨と佐織。うむ、きっとここが明るかったらスカートがめくれて桃源郷を味わえるはずであったろうな。その後、どうなるかは全く予想できないけど。
「おーい、花梨。佐織。大丈夫か〜?」
「う、うん。一応」
「大丈夫〜」
 意外と近くから返事が返ってきたので、ほっと一安心。とりあえず、何とか落ちながらもしっかりと握りしめていた懐中電灯の明かりをつける。なんだか、さっきより心細い明かりになっているのは気のせいだろうか。
「何か、今すぐ消えそうな光だよね」
「みなまで言うな、花梨。これは誰が見てもそうだ」
「早いところ移動しなきゃね」
 たぶん、これもアトラクションの一環なのだろうから、きっと出口はあるはず。幸いにも、その予想はあながち間違ってはいないようで、ちゃんと道があった。
「さっきよりだいぶ暗いけど、大丈夫だよね?」


 いや、大丈夫じゃなかった。
 きっと分かり切ったことだったのだろう。しかし、残念ながらそこまで俺の思考回路は賢いものでなく、こうなることを心のどこかでは予想していたのだろうけど、恐らく本能がその予想を意識させなかったのだろう。
「こ、怖いよ〜」
 と、右側で俺の腕に抱きつく花梨。イイ感じのふくらみが腕にあたっているんだけど、残念ながら俺も怖いので全く嬉しさも何も感じない。
「ほ、ほら、ちゃんと歩いてよ」
 と、今度は左側。こちらもまた俺の腕をひしと掴み、全く離そうとしない。花梨よりは幾分控えめだが、やはり女の子なので、俺の腕にはイイ感じのふくらみがこれまたあたっている。
 端から見たら、両手に華って状況なのだが、今の現状では全然喜べない。何て言うことだ。懐中電灯の電池がつい先ほど、ものの見事に寿命を迎えてしまわれ、何度もオンオフを切り替えてみるが、電力が完全に底をついたのか、懐中電灯はウンともスンともいななくなった。
 さらに、気味が悪いことに先ほどからどこからか水滴が落ちる音が聞こえてくるのだ。妙に足下は冷たいし。きっとドライアイスでもあるのだろう。アトラクションだし。
 しかしまぁ、こんなに真っ暗なのにどうやって進めというのだ。ところどころ小さな明かりが足下にあるのだが、全然頼りにならない。まず、どの経路を通ればいいのか分からないのだ。
 手探り状態でゆっくりゆっくり前へ進む。最悪の場合、リタイヤという手段があるからこそ、こうして前へ進めているのかもしれない。ていうか、きっと俺も花梨も佐織も、今自分たちがアトラクションの中、迷路の中にいるということを忘れている。完全に、俺たちはこのアトラクションに飲み込まれていた。
「い、いつになったらでれるのよぉ」
 悲痛の叫びをあげる佐織。その声に、いつもの力はない。ていうか、さっきから腕に力込めてきてませんか? 段々と血流が悪くなってきた気がする。
「ま、まぁ、進んでいけば大丈夫だって」
 そう言って、俺はまた一歩前へ……

 ごんっ

 と、思いっ切り頭を打った。
「いってぇ!」
 手を前に差し出してみると、なんとそこは行き止まりだった。
「い、行き止まりだよ、大地君」
「参ったなぁ……」
 自分たちは暗闇の中、一本道を真っ直ぐ進んできたのである。花梨と佐織が両方の壁を手で確認しながら歩いてきたから間違いないはずだ。じゃあ……
「ど、どうやってここから出るのよぉ……」
 へなへなと佐織が座り込む。ううむ、困った。俺は腕を組んで考える。どう考えてもここまでは一本道。しかし、絶対に上に上がるための通路があるはず。なら、ここで終わりなわけが……。
「あっ」
 突然、思いついたかのように花梨が壁にくっつく。
「どうした?」
「ほら、さっき落とし穴に落ちてここまできたでしょ。そんな仕掛けがあるのなら、この壁だって反転したりするんじゃないかなぁって」
「なるほど! 確かにそうだな」
 俺も早速手で壁を探る。佐織はきゅっと、俺のシャツを掴んだまま座っている。
 いろいろと探っていると、一箇所、飛び出している箇所があった。俺は早速そこを押す。
「って、え?」
 押したのはよかった。しかし、そのままボタンは一気に沈み込み、自分の肩までずっぽり。いや、なんか俺、引っ張られてる?
「う、うわ、なんだこれ!」
「大地君!」
「大地!?」
「ええぇぇぇっ!」
 そのまま、俺は壁に吸い込まれた。
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