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Every Day!!

3-10

「げ、ゲームですか?」
「ああ、そうとも!」
 怪しげな園長は、両腕を大きく広げながら実に愉快そうに言った。
「とは言っても、実際はこのお化け屋敷に新たに導入したアトラクションを是非招待客としてやって頂きたいのだよ。もちろん、百万人目の当アトラクションの入場者なので、お金は無料さ。出るときにこの紙を渡すと入園料が戻ってくるからね。さて、どうかね? やってみないかね?」
 俺はみんなの顔を見渡す。和彦は興味津々だし、泉田姉妹は今にもアトラクションに飛び込まんとしている恵里を、拓也が必死に抑えている。花梨もかなり気になるようで、目を爛々と輝かせて話を聞いている。
 そして、佐織はというと、先ほどまでの憂いを含んだ表情が少し和らぎ、園長の話を聞いていた。
 ――良かった。
 ホッと俺は息を吐くと、再び園長に向き直った。
「分かりました。では、俺たちが最初の客になります」
「ハッハッハー! 君ならそう言ってくれると信じていたよ。さ、中に入りたまえ。詳しい説明なんていらん。成り行きに任せて楽しむんだよ!」
 俺たちは、百万人目兼最初の客として、ヘボラパークお化け屋敷新区画に入っていった。

「ヘボラパークのお化け屋敷は開園当時からあるアトラクションです。5年ほど前にリニューアルし、以降このアトラクションはヘボラパークの目玉アトラクションとして人気を集めています。これから皆様をご案内するのはお化け屋敷アトラクション拡張に伴い、増設された新しいエリアとなります。ゲーム形式で、ちょっと普通のお化け屋敷とは違うようになっています」
 先導する係員が丁寧に説明しているのを、俺たちは期待で胸を膨らませながら聴いていた。
 ヘボラパークのお化け屋敷が人気があるのは知っている。故に、その新しいエリア、というものがどんなものなのか。ものすごく楽しみだ。
 ゲーム形式のお化け屋敷というものも、気になる。園長もゲームだと言っていたが、どんなゲームなのだろう。
「はい、着きました。ここが入り口となります。では、ルールを説明しますね」
 そう言って、係員はどこからともなく看板を取り出した。
「ルールは簡単。3人一組で、この迷路を突破して貰います。皆様は7名いらっしゃるので、今回は4人と3人の二組に分けさせて頂きます。この迷路は、もちろん普通の迷路じゃないです。正しい道のりには、必ず何か課題があるのです。例えば……。おっと、これは園長から口止めされてるんです。すいません」
 こほん、と一間空けて、係員はさらに詳しい説明をする。
「もし迷って、どうしても出れないのでしたら、10メートル間隔にボタンが設置してあります。これを押すとギブアップ、ということで、係の者がすぐにその場に行き、他の通路で外に出ることができます。一応、皆様は招待客、ということなので、クリアーすると商品が用意されていますので、頑張って脱出してくださいね。では、くじをお引きになってください」
 目の前のクジを引く。2番。
「和彦、何番だった?」
「あ? ああ、1番だったよ」
「私も、1番!」
「うわ、姉ちゃんといっしょかよ……」
「何よ! 文句あるの!」
「佐川さんは何番だったの?」
「えっと、私は1番」
「私、2番だよー!」
「あっ」
 後ろで佐織が小さな声をあげる。
「2番だ……」
 なんてこった。思わず、俺は頭を抱えそうになった。
 まさか、花梨と佐織と俺とは。

 佐織とは、まだ気まずいままであるのは、やっぱり変わらない。
 そして、俺は最近の花梨がよく分からない。だからだろうか。二人と一緒っていうのは大変辛い。
 が、神は無情だった。そんな二人と、一緒のチームにするとは。
 不気味な感じの迷路。じとーっと湿って、薄暗い。足下は、工夫を凝らして土だった。おいおい、懲りすぎだろ。
 そんなところを、懐中電灯を持った俺。その後ろに花梨と佐織。
 入り口の雰囲気ですでに、二人はびびりまくっている。当たり前だ。このお化け屋敷。BGMすらない。ただひんやりとして、暗くて、湿気っているだけなのだ。
「なんだか、嫌な感じだね……」
 と、花梨。
「だな」
「こ、怖いよ」
 と、佐織。
「俺もだ」
 とりあえず、進まないことには埒があかない。リタイアもありなのだから、行けるところまではいこう。タダなんだし。
 一歩踏み出す。土なので、アスファルトとは違う何とも言えない感触。砂を蹴る音が暗闇に妙に響く。
 懐中電灯は電池切れ間近なのか、それとも元からそうなのか知らないが嫌な感じに、ジジジと、とぎれとぎれの光で辺りを照らす。係員め、電池切れ間近だったら許さねぇぞ。
 ひたひたと妙に湿気ている足下。三人身を寄せ合ってゆっくりゆっくりと進む。
 その時だった。

 カチッ

「えっ?」
「どうした、佐織?」
 隣の佐織の方を向く。
「え、えっと……」
 なんだか顔が青ざめているように見える。
「どうしたの?」
 花梨が下からのぞき込んだ。
「な、何か踏んじゃった……」
 急に、足下の感覚が消えた。ふっと、体に浮游感を覚える。
「あー、これは……」
「き、き……きゃーっ!」
 重力に従い、俺たちは落ちていく。
 つまり――
 ――罠<トラップ>である。
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