Every Day!!
2-3
練習が始まる。
俺たち男子諸君は、1対2での練習を。女子達(といっても2人だが)は花梨の特訓を行っていた。
基本的に俺と根暗が攻め、磯田が守る。
根暗はゴール下では全く役立たずだった。つーか磯田から逃げてるし。
そう言う磯田は、スリーポイントラインからのシュートがからっきし駄目。全く入らない。
つまり、ゴール下では俺と磯田、その外では根暗と佐川さんが頑張れば、そこそこは行けるという結論に至った。
ドリブルのまま磯田に突っ込む。
右手には根暗。一度切り返し、そのままの体勢でボールを高く投げる。
そのボールを根暗がキャッチ。そのままシュート。
しかし、惜しくもリングに阻まれ、ボールは落ちる。
俺と磯田がリバウンドを取りにゴール下で肩をぶつけ合う。
何とか手を伸ばし、先にボールを取ったのは俺。まぁ、身長が磯田より5センチ高いしな。
そんな実践形式の練習でコンビネーションをしっかりと高めていく。
それにしても、女子の方はどうなったんだろうな。
磯田がばててきたので、一時中断として、俺は少し離れたコートで練習する女子の様子を見に行く。
差し入れとして磯田が買ってきたスポーツ飲料も持っていくか。
すると、花梨と佐川さんはパス回しの練習をしていた。
まぁ、花梨のポジションはシューティングガードだしな。パスが上手くないと話にならないし。
「よぉ、お二人さん。調子はどう?」
「あ、岡野君」
佐川さんの方が俺に駆け寄ってくる。花梨は相当疲れているのか、その場にへたり込み、ぜぇぜぇと息をしている。
「花梨ちゃん、だいぶセンスいいのよ。天性の素質ね。シュートはまだまだだけどパスに関してはもう合格点出してもいいぐらい」
佐川さんは目を輝かせて話す。やっぱ好きなことしている人の目は違うなぁ。
俺は花梨のそばに行ってスポーツ飲料を手渡す。
「ほら。お疲れ」
「あ、ありがとう」
花梨は受け取るやいなやグビグビと飲む。相当のどが渇いていたのだろう。
「あー! 花梨ちゃんずるい!」
「何言ってんだよ。ほら、佐川さんのもあるって」
「おお、サンキュ。岡野君」
腰に手を当てて勢いよく飲む佐川さん。なんかおっさんみたいだな。
一気に飲み干してしまった佐川さんは、タオルで汗を拭く。
「ねぇ、岡野君。男子の調子はどう?」
「ん、まぁまぁかな。まぁ、まだ1回目だし、少しコンビネーションが悪いけど、あと2回くらい練習したら合わせられるんじゃない」
男子はかなり最初から息が合っていた。
まぁ、どちらかというと単調な感じだったのでお互い合わせやすかったと言うべきだろう。
「そっか。まぁ、とりあえず頑張ろうよ」
「そうだな。ほら、花梨。いつまでばててるんだよ。練習練習」
「うひ〜」
その日の練習は、日が暮れるまで行われた。
次の日の放課後、俺はソフトの練習に参加した。
もちろん、バスケットの練習もあるのだが、こっちだって参加しないとマズイ。
ポジションの方はさっさと決めたので、俺はとりあえず和彦とキャッチボールしながら肩を暖める。
「なぁ、和彦。Bの方はどうだった?」
「ああ、ろくなメンバーじゃなかったぜ。まぁ、何とか3回戦までは勝ち上がるわ」
二人の間で大きなソフトボールが行ったり来たりする。
それにしても、この球を見ると入学前の悪夢が思い出される。
この大きな白球が、俺の顔面にぶちあたったあの記憶だ。思い出すだけで、鼻の痛みが蘇る。
「おーい。岡野ぉ」
「なん、へぶぅ!」
誰かに呼ばれたので、振り返ったらソフトボールが顔面に飛んできた。
避けることもできず、見事に顔面にクリティカルヒット。
今回は気絶することもなかったのだが、鼻にはあのときの痛みが再び走る。
「なにすんだよ、須野!」
俺はそのボールを投げた張本人、須野に向かって怒鳴る。
須野は全く気にする様子もなく、俺の顔に当たったボールを拾い上げる。
「ほら、キャッチボールにつきあえ」
かなり傍若無人なやつだ。ボールをぶつけておいて、キャッチボールにつきあえ、だぁ。
「俺は和彦としてるんだよ。悪いが他を当たれ」
俺は和彦にボールを投げる。そう、俺には和彦という最高のパートナーがいるのだ。ハッハッハ。
「何を言ってる。お前はキャッチャーだろ。私はピッチャーだ。とりあえずバッテリーなんだからつきあえ」
「何を言っている須野さんよ。俺と大地の仲は引き裂くことできんぞ」
よく言った、和彦よ。さすが我が親友。残念ながら君のつけいる隙間はないのだよ。
「河原、岡野の代わりに綾木さん連れてきたからその子とキャッチボールしといてくれ」
須野の後ろから小柄な女の子が出てきた。そう言えばこの子もソフト出る人だったっけ。
「何!? 綾木さんだって!? オッケー。任せろ。頑張れよ、大地」
「な、裏切りものめぇ! 俺との友情はどうした」
さっきの言葉はウソかぁ、と叫びながら、俺は無情にも須野に連れて行かれた。
「岡野。とりあえず球を受けろ」
「うぅ、許せんぞぉ、和彦めぇ……」
と、恨みの言葉を漏らしながら渋々腰を下ろし、受ける体勢を整える。
須野は大きく手を回し、球を投げる。
速い!
ズバンといい音を響かせ、須野の投げた球は俺のミットに吸い込まれた。
手のひらがじんじんする。
須野は平然と2球目の投球体勢に入る。
おい、こら、待て。痛いってマジで。
「ああ、ちなみに後30球は投げるから」
「ま、マジっすか!?」
無言のままうなずき、第2球目。
球は思いっ切りバウンドして下から跳ね上がった来た。
「うぉ!」
思いっ切り顎にあたる。痛い。めちゃくちゃ痛い。
「ああ、すまん」
悶絶する俺にさらっと一言。
「じゃあ、後29球ね」
その日、俺が寮に帰ったときには体中にアザが残っていたりする。
何て言うか、やっぱり体を動かすって気持ちいい。
明日はいよいよ球技大会本番。なんと5日間もの日にちを使い、競技は行われる。
まず、明日はバスケットボールとサッカーの予選。
バスケットはなんと各クラス2チームにそれが6学年なので96チームもある。
それに先生チームが8チームも加わるのだ。恐ろしい。
サッカーは出るクラスが少ない癖して35チームもあったりする。内先生チーム2。
俺たちはバスケットに出るので、とりあえず対戦チームを確認する。
104チームを4ブロックに分けてのトーナメント戦。
俺たち高等部1年T組Aチーム(長いな)はCブロックの端っこだった。
ちなみにBチームはAブロック。決勝までいかないと戦うことにならない。
相手は中等部2年B組Bチーム。このチームに勝ったら次の相手は高等部1年D組Aか、中等部3年G組Aだ。
なんか年上のチームとあたらない。なんてラッキー。
しかも、何故だかA、Dブロックに高等部2、3年のチームが多くあり、お陰でBとCブロックは中等部ばかりだ。
つーかこのトーナメント表ってマジでクジだったんだ。
「ふははは、俺のくじ運の強さを見たか!」
などと磯田が威張っていたが、それでもBチームの方は地獄のAブロックですよ?
その日は、とりあえず2試合してベスト28が出そろう。
サッカーの方はベスト9まで出そろうそうだ。それにしてもどちらも中途半端な数が残るな。
2日目は午前はバレーボール。午後はサッカー。
バレーボールも同じく104チームあるのでまたまた4ブロックに分けてのトーナメント戦である。
こっちも2試合行いベスト28が出そろうまで行う。
須野はBチームらしく、相手は早速高等部2年D組Aチームらしい。まぁ、とりあえず応援でもしなくちゃな。
なお、バスケットとバレーは高等部、中等部、そして大学部の体育館を使用して行われる。
各学部なんと体育館を2つずつ所有しているのでこれだけの数のチームの試合をこなせるらしい。
まぁ、これだけ無いと無理だわな。1回戦で52試合もあるし。
各体育館で4試合ずつ、1度に24試合進めることができるそうだ。
サッカーはベスト9から残り3チームになるまで試合を行う。
まぁ、となると必然的に2試合行うことになるんだけどね。
グラウンドの方はこれも各学部2面ずつあるそうなので、そこで行う。
まぁ、サッカーは出場チーム少ないしな。
そして3日目。
3日目は午前はソフトボール、午後はバスケットボールが予定されている。
ソフトボールの出場チームは47チーム。先生チームはこの内の2チーム。
2ブロックに分けられていて、自称くじ運がいい磯田が見事シードを引き抜き、1回戦は不戦勝となっていた。
2回戦は相手は高等部2年でに少し厳しい戦いになりそうだ。
この日はベスト12が出そろうまでやるそうだ。
そして午後。
前回ベスト28まで出そろったので、そこからベスト8まで減らしていくそうだ。
ここまで残れば立派だなと思う。
そして4日目。
バレーをベスト8まで減らし、サッカーの決勝戦にソフトボールの準決勝までが行われる。
ここまで来ると、だいぶ白熱したものになってくる。
負けてしまったチームは、負けた相手を応援し、暇な人もその応援に加わる。
すると、人気チームのところはものすごい応援合戦になるらしい。
なんか賞で応援ナンバー・ワン賞とやらがあるかららしいが。
最終日の5日目。
ソフトボール決勝、バスケットボール決勝。バレーボール決勝と決勝づくしだ。
しかも、ソフトは2試合だが、バレーとバスケットは決勝まで来るとその日で3試合行わなければならないという超ハードな日程。
まぁ、さすが大八橋学園球技大会ともいえるだろうけども。
さて、とりあえず俺はこんな事を長々と説明してくれた磯田を蹴り飛ばし、バスケットの最後の練習を行っていた。
花梨のパス精度も上がり、男女のコンビネーションも上々。だいぶ調子がいい。
俺に関してはフリースローのシュート率がだいぶ良くなってきた。10本打ったら運が良ければ10本すべてはいる。
根暗もだいぶいい動きをする。
磯田を生け贄に競り合いの練習をし、だいぶぶつかり合えるようになった。
根暗なら体が大きい分競り合いでは絶対有利なはずだ。
佐川さんは相変わらず元気で、すばしっこいプレーをする。
速い。とにかく速い。
きっとドリブルなら1番上手いのは佐川さんだ。
しかも、みんなに的確な指示を出すので、動きやすいのだ。
さすがバスケ部、と言えるだろう。
「ふははは、これで俺たちは優勝間違い無しだな。ふはははは!」
磯田がすでに勝った気でいるが気にしない。
俺はばてている根暗と花梨にスポーツ飲料を手渡す。
「あ、ありがとう」
「……どうも……」
花梨はグビグビと、根暗はチビチビと飲む。
そして、そこでやっぱり佐川さんが
「あー、ずーるーいー!」
と言って入ってきた。
もちろん、佐川さんのも用意していたので手渡してやる。
「さっすが岡野君。気前がいいねぇ」
そう言うと、お得意の一気飲み。絶対に真似できない。
「お、俺にもくれ」
と磯田がやってきた。
仕方がないのでウーロン茶を差し出す。
「あ、あれ? 俺のは何で茶?」
「ああ、すまないね。品切れだったから」
「そ、そんなぁ」
くずおれる磯田を無視して、俺もスポーツ飲料を勢いよく飲む。
明日は本番。
何処まで勝ち上がれるか分からないけど、楽しい週にしたいと思う。
「うっし、頑張るか」
「おー!」
「………うん」
「そうだね。頑張ろうか」
「お、俺のアクエリアス……」
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