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Every Day!!

2-12

 球技大会5日目、最終日。
 いつになく大盛り上がりのこの様子は尋常じゃない。
 とりあえず俺は、いつものように学校に向かっているのであった。
 街路樹にいろいろとぶら下げられているトトカルチョの呼びかけの紙や、活躍したりしている選手のブロマイドの広告などが至る所にぶら下げられている。
「……俺、マジで帰ろうかな」
「ちょ、大地君!? 何言ってるのよ。あと3回勝てば優勝なんだよ。そんなこと言わないの」
 隣で歩いている紗英さんがにこやかに言う。
「そうだよ、大地君。もうすぐ優勝なんだから。あんなの気にしちゃ駄目」
 逆隣で歩いていた花梨も言う。いや、君のブロマイドもありますが何か? しかも、心なしかかなり多い気がするのですが?
「うへぇ。でもさぁ、こんなのやられたらなんだか乗り気にならなくない?」
「はいはい。あーだこーだ言う前に学校へ行きましょうね」
「へーい」
 段々と学園の姿が見えてくる。
 本日はソフトボール、バスケットボール、バレーボールが決勝まで行われ、すべての結果発表が行われる。
 大盛り上がりの球技大会も、今日で最後だ。
 俺はバスケットがまだ残っているからな。てかホント、ここまでよく残ったって感じだ。
「ういーっす。大地」
「お、和彦」
「お、大地ご一行じゃん? オッハー、花梨ちゃんに、紗英ちゃん」
「おはようございます。久美先輩」
 向こうから和彦と久美先輩が並んで歩いてきた。心なしか和彦、お前なんか傷だらけだぞ。
「ああ、これは私との愛の痕だよーん」
「ぅぅぅうう……お嫁に行けない」
 泣きながら、自分を抱きしめる和彦。
 何があったんだ、和彦。
 想像絶することがあったに違いない。
「さて、今日は最低1回は勝てるね〜。君たちは〜」
「え? 何でですか?」
 久美先輩は胸を少し前につきだして、フフンと鼻で笑う。
「その次は私のクラスとだからだよ〜ん」
「げ、そうだった」
 Cブロックを勝ち抜けば、次はDブロックの玲&久美先輩コンビの居るクラスと当たる。うわぁ、何てこった。
「ま、お互いがんばろーね」
「はぁ、どうも」
 校門で別れ、俺と和彦、花梨は教室に向かう。
 その後、体育館へ移動し、競技開始となっているからだ。
 教室にはいると、やっぱしというか、後ろの黒板に『シュートDA!全員トトカルチョ♪』と銘打ったものがなされていた。
 ちなみに、本命はどうやら佐川さんのようだ。その次が俺。根暗、花梨と続いて大穴は磯田。
 まぁ、たぶんこの通りだろうけどさ。
 てか磯田で40点以上が大穴じゃないのはなんで?
 席に荷物を置き、いつも通り無愛想な顔をしている須野に話を聞いてみる。
「なぁ、後ろの何?」
「ん? 後ろの?」
 須野は後ろを振り返り、黒板を見ると、ああ、と納得したような顔になる。
「見ての通りトトカルチョよ。誰が一番多く点を入れて、それが何点か競ってるわけ。ちなみに私は根暗で23点に賭けたわ」
「へ、へぇ」
 まさか須野までもが参加しているとは思ってもなかったぜ。
「だって全員トトカルチョだもん」
「げ?」
 俺の思ってることにサラリと答える須野。こ、こいつもこえぇ。
「大変なことになってるな」
 和彦が後ろから声をかける。
「だな。ま、今日で祭りも終わりさ。とりあえず頑張る」
 俺はハハハと苦笑いを浮かべながら答えた。
 とりあえず、今日は楽しむって決めたのだからな。


 Cブロック決勝の行われる高等部第1体育館はものすごい熱気に包まれていた。
 俺たちの相手は高等部3年A組Bチーム。てかソフトボールでも戦ったな。
 やっぱし、相手はかなりテンションが高く、「3−Aファイ! ファイ! ファイ! ファイ! ウォオオオ、3−A!」とお決まりのかけ声もやっている。
 俺たちは各自ボールを持って目下ウォーミングアップをしている最中で、俺はシュートの練習をしている。
「岡野君。調子はどう?」
「おお、根暗。すこぶる良いぞ。この試合には勝たないといけないしな。相手にゃソフトで負けたから借りを返さないと」
「そだね。頑張らなくちゃ」
 そう言いながら、根暗もシュート。
 大きく弧を描きながら、ボールはゴールに吸い込まれた。
「あのさ」
「ん?」
 シュートの体勢で、俺は首だけ根暗に向ける。
「僕、綾木さんに告白したんだ」
「え、マジか!?」
 突然のことに、俺の放ったシュートはトンチンカンな方向へ。
 しかし、今はそれどころじゃない。根暗が告白した。そのことの方が深刻だ。
「で、どうだったんだ?」
 すると、根暗はエヘッと笑った。
「駄目だったや」
「……そっか」
 ボールを拾い、俺はもう一度シュートを打つ。
「河原君のことが好きなんだってね」
「ああ」
 今度は、リングに当たり、ゴールに入る。
「知ってたんでしょ?」
「ああ」
 根暗も、シュートを打つ。リングにも触れず、吸い込まれる。
「僕さ。スッキリしたや」
 ボールを人差し指の上で回し、またエヘッと笑う。
「何かさ、フッと体が軽くなった感じがしたんだ。告白したからかな」
「そうだろうな」
 俺も笑う。
「とりあえず、今は勝つぞ」
「うん、そだね」
 気合いの入っている相手チームを見る。
 身長ではほぼ互角と言っていいだろう。たぶん、こちらの方が実力は上だ。
「吹っ切れたんだから、思いっ切り攻め込めるだろ」
 俺の問いかけに、根暗はしばし考え込んで、笑いながら答える。
「4ファールくらい覚悟しておいてよ」
「うお、おっかねぇな」
 丁度、その時。審判が選手を招集した。
「うっし、行くか。勝ちに」
「あと楽しみにね」
 根暗が本当に憑き物でも無くなったかのような変貌ぶり。
 これで、この試合はいただきだな。
 俺はニンマリと笑うのだった。



 ピーッ!
 試合開始の笛の合図と共に、根暗が審判の投げたボールに飛びつく。
 相手は2年上の3年生。しかし、がたいのでかさでは根暗の方が上だった。
 根暗はボールを取ると、すぐに佐川さんに回す。
 佐川さんはボールを受けると、ドリブルであがり花梨にパス。
 花梨はすぐに後ろにいた根暗にボールを戻し、根暗はドリブルで深く攻めあがる。
 ゴール下で待機していた俺を一瞥すると、シュートの体制に入った。
 相手の一人が根暗のシュートを邪魔しようとジャンプする。根暗はその脇の下にボールを投げ、ワンバウンドしたボールは俺の元へ。
 俺には一人、マークしていたが、審判に見えないように肘で押し返し、そのままシュート。
 リングに当たり、ボールはゴールに吸い込まれた。
 ピーッ!
 さい先良く、俺たちは先制。
 さて、ガンガン攻めますか。


 やっぱし、そう簡単に攻めさせてくれるほど相手は甘くなかった。
 観客席で試合を食い入るように見ていたのは、以外にも無愛想ナンバー1の須野加奈子だった。
 現在、第1クォーターの8分を過ぎた頃。25対23と、わずかに大地たちのチームがリードしている。
 後2分ほどで第1クォーターが終わる。
 基本的に攻め方は前までの試合と変わっていない。佐川百合子を起点に、花梨がつなぎ役、根暗と大地で攻めている。
 ただ、この超速攻の攻撃布陣が仇となり、守備にいささか不安があった。
 磯田は確かに守備に関してはものすごく上手い。しかし、到底一人じゃすべて防ぐことなんてできない。
 一応、佐川さんと花梨が戻り、守備に加わるようにして今までやっていたが、女子二人で防ぐにはちと苦しい。
 お陰で、多くのシュートの決めているのに、逆にこっちも決められているので点差が開かず、厳しい接戦になっているのだ。
 加奈子が見つめる先には、ボールを受けたのは良かったが、どうにもパスもシュートも出せない大地の姿があった。
「あ、」
 パスを出そうとするが、無理な体勢からパスを出してので、見事パスカットされて攻められる。
 そのまま相手はシュートを決める。同点。
「何やってるのよ」
 ぶつぶつと一人で何かを呟いているその姿は、かなり不気味な光景だが、加奈子自身は気にしていなかった。
「ああ、また!」
 今度はシュート体制に入った大地がタックルをうけた。
 しかし、審判は見ていなかったようで。ファールにはならなかった。
 かなりしかめっ面になったが、再びプレーを再開する大地。
「ったく、ちゃんとやりなよ!」
 と、叫びたくなったのだが、ぐっとこらえた。
 そんなこと、言うたちじゃない。
 とりあえず、黙って見ないと。
 加奈子は、じっと試合を見つめる。



 磯田大麻は、イライラしていた。
 守備専門の漢と二つ名をせっかく手に入れたのに、さっきからホイホイとシュートを決められているからだ。
 まぁ、ほとんど一人で守備をしているものなのだが、大麻にとっては別にそんなの意味はない。
 自分だからこそ、止められる。
 そういう自負があるのだ。
 だけど、また点を決められる。
 とうとう同点になった。
 さすが3年生と言うべきだろうが、大麻は学年差なんて関係ないと思っている。
 ただ、がたいがでかくなっただけ。それだけの意味だ。
 どうせ高校生同士の戦いには変わりない。
 このままでは、守備専門の漢の二つ名が廃れてしまう。
 ドリブルで突破してくる相手に、大麻は正面から突っ込む。
 相手は突破を試みるが、大麻は目の前にピッタリついて離れない。
 パスを出す方向を予想し、大麻はその方向に手を伸ばす。
 案の定、その方向にパスを出そうと思っていた相手は、すでにボールを手放していた。
 上手い具合にパスカットして、大麻がパスを出す。
 すでに、第1クォーターはあと10数秒。
 パスをうけた百合子は、一気にドリブルであがり、スリーポイントラインからシュートを試みた。
 大きく弧を描いたボールは、リングにはじかれ下に落ちる。
 そこに大地が上手くリバウンドを取り、そのままシュートした。
 ピーッ!
 ボールがゴールに入った瞬間、第1クォーターの終了を告げる笛が鳴った。
 27対25。大接戦である。


「ああっ! もう、畜生!」
 俺は汗で濡れた髪をがしがしとタオルで拭く。
「あんなに手こずるとは思わなかったわね」
 隣で佐川さんがドリンクを飲みながらそう言う。
 根暗はうなずき、花梨もそうだね、と言う。磯田はいらだちでベンチを蹴り飛ばし、テクニカルファールをくらっていた。ざまぁみろ。
「さて、第2クォーターはどうする?」
「ううむ。どうするかなぁ」
 相手は俺たちが速攻で攻めているほころびを狙っている。
 つまり、速攻を速攻で返してくる戦法だ。
 まぁ、当たり前のといやぁ当たり前だが、相手の切り替え、それに守備がとてつもなく上手いのが難点だった。
「てか守備がきついのよね。マンマークかと思ったらいつの間にか違う人に変わってるし、すぐに違う人のマークにつくし」
 佐川さんがボードを手にとって唸る。
 あれだけ守備が上手いと、こっちもお手上げだ。ハッキリ言って、こっちは守備がへたくそなのだから、攻めることができないと負ける。
「どうすればいいんだろう……」
 根暗も、ドリンクをちゅーちゅー吸いながら、腕を組んで天井を見つめる。頭にはタオルが1枚引っかかっていた。
 根暗、端から見れば、なかなか滑稽な姿だぜ。
「仕方ない、ここで一計を練るか」
「え、何か思いついたの? 大地君」
 花梨が興味津々で俺を見る。
「ああ。だけど、今まで一度もやったこと無いことだからな。荒療治だけど、今までの展開を変えれるかもしれない」
「ぬあー、岡野め! 一人で目立つことは許さんぞー!」
 磯田がガァーッと俺の背後で叫ぶ。うっせぇーよ、お前。
「いいから聞け。いいか、流れを変えるには磯田も重要なんだから」
 磯田も重要という言葉に、磯田はピクンと反応する。
 俺たちは円陣を組み、俺はその作戦を告げる。
「げぇー、それってだいぶきつくないか? てか、俺がきついって」
 磯田は露骨に嫌そうな顔をする。
「でも、お前、目立てるぜ」
「やらせてもらいます」
 磯田が単純で良かった。
「よし、じゃあ、第2クォーター。いくぞ!」
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