彼と彼女の1500という数字
第13話 ……マジっすか?
ってなわけで、合宿。
世間じゃ大型連休で、遊びに行くぜ! とか言っている訳だけど、俺たちは練習練習。なんでか知らないけど陸上部と一緒にね。
ホント、部長は一体何を考えているんだろうね。陸上部と合同合宿ってあそこ、部員六十人超えてなかった? そんなところと一緒にやっても効率が悪いだけだと思うんだけどなぁ? ほら、うちって少数精鋭じゃん。質が違うの、質が。練習もレベルも。
どっちにせよ、部員が多い分、経費も多い陸上部から搾取しようとかいう魂胆は見え見えですよ、部長。せこいって。
バスに揺られて、県立のスポーツ会館へ。その辺り周辺はホントスポーツをするために整備されている。実はと言うと、おっきなプールもあったりするんだけど、部長の野郎、見事に申請出すの忘れて、使えまっしぇーん!
まぁ、俺は別にいいけどさ。走り込んで体力つけないと。一五〇〇なんて泳げないしね。うん。結局のところ、一五〇〇なんていかにその距離を一定の速さで泳げるかで勝負が決まるわけ。単数で速くても意味ないし。個別で見るとそれほどでもないけど、全体で見るとばらつきがなくて速い、っていうのが一五〇〇の理想。
ま、俺の理想は最初から最後までぶっちぎりの一位なわけだけど。やっぱり、トップじゃないと駄目だよ。ゴールドメダル。一位、第一中央高校西田くん。オメデトウ。ね、気分いいでしょ。おそらく。
スポーツ会館に着くやいなや、とりあえず班分け。どうやら、合宿は班別で練習を行うらしい。確かに、大人数でやったら収拾がつかなくなるもんね。
で、
「何? このメンバー?」
と、俺が言いたかったことを見事代弁してくださったのは例の長谷川。となりには中島もいる。やほー。
「ガハハハ! 俺が決めたのだから異論はあるまい!」
もうね、うんざり。なんなの? この部長は。明らかにおかしなメンバー。
「だいいち、このメンバーの中にアタシもいるのは何で?」
首をかしげる川辺センパイ。あー、もう、川辺センパイ、イロッペーっす! 何ですか、そのジャージを押し上げる双子山は!
って、イカンイカン。なんか混乱してるな。テンション上がりすぎだろ。うん。落ち着けよ、俺。
「とりあえず練習しましょーよ」
相変わらずマイペースだねぇ、中島。っていうかホント自然体。いいね、こういう女の子。俺の彼女候補の一人に加えておこーっと。顔もいいし。
で、練習開始。
おっきな陸上競技場があるからそこを使わせてもらうそうな。やったね。陸上競技場なんて入る機会ねーし。うんうん、いい経験ができるよ。
と、そこで肩をつつかれたわけ。振り返ってみると、すごく笑顔な部長。
「ほら、ロードワーク出るぞ♪」
……マジっすか?
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