彼と彼女の1500という数字
第4話 ビックリしたわ
ビックリしたわね、ホント。
ほら、私、高校入ったのよ。陸上の推薦でね。やるでしょ? しかも、推薦で入った割にはその学校ってなかなかの進学校なのよ。あ、でも私はスポーツ科ね。頭良いのは普通科の諸君。
もちろん、陸上の推薦なんだから入学式の前から練習練習。それが至ってきつくないの。楽ちん。高校の練習ってこんなにしょぼかったっけって思っちゃった。
一五〇〇メートルをやる人は私以外に七人もいたわ。女子だけでね。私より速いのは三人くらいだけど。
その内二人は去年のインターハイでワンツーフィニッシュしたんだって。つまり優勝と準優勝。一位と二位。凄いよねぇ。憧れるなぁ。私もそれだけ速くなりたいと思う。うん。なりたい。
とりあえず私はその二人と仲良くしたわ。速い先輩と仲良くなればいろいろとアドバイス貰ったりできるでしょ?
でも、滅茶苦茶ごますったりはしなかったわ。だって、そんなことすっとしてたら、同級生から嫌われちゃうもん。女の子の人間関係って複雑で繊細なのよ。つまり大変なの。あーあ、男に生まれたかったなぁ。
さて、うちの陸上部はそこそこ部員が多い。確か、二、三年生で四十五人くらいだったけな?野球部に次いで多いらしい。しかも、そこそこ強い。去年はインターハイで団体で入賞したらしい。流石だね、ホント。
今年の新入部員は私を含めて二十人。これでとうとう六十人を超す大所帯になったわけ。きゃー、全員の名前、覚えられないよぉ。
まぁ、長距離の人と、部長とかの名前を覚えとけばいいか。
さて、私は陸上部に入って早速仲良くなった子がいるのよ。確か中島由紀っていったっけ。はは、仲良くなったって言ってるわりにはハッキリと名前、覚えてないんだけどね。
その子も一五〇〇メートル走るの、後、四〇〇メートルも。なかなか速かったわ。私よりは遅いけど。でも、フォームがかなりキレイで感心しちゃった。
だって私よりテンポがよくて、キレイなんだもん。
でも、スタミナが少々不足気味のようね。いや、普通よりはあるんだけど、私が、ほら、中学の時に魔の走り込みしたでしょ? だから、スタミナは男子並みにあるから私がありすぎるからそう感じるのよね、きっと。ああ、うぬぼれでも何でもないからね。ただ私と比較しただけよ。
初めて会ったときは彼女から声をかけてきたわ。確か「長谷川さん?」って声かけてきたんだっけ。最初は誰? って感じだったのよ。で、彼女は「覚えてるって?」って、聞いてきたの。頑張って思い出そうとしたのよ。
そしたら、思い出した。最後の大会で、私に食らいついてきて、最後に離された子。ほら、私が大会新記録出して優勝した大会よ。その大会で準優勝した子が彼女だったの。私は「あー、大会で二着だった人?」って聞いたの。
その時、しまったって思ったわね。だって、一着は私でしょ。もしかしたら「私より遅かった人?」って意味で受け取られてるかもしれないじゃん。でも、彼女は満面の笑みで「そうよ。あー、よかった。覚えてくれてたんだ」って言ってくれたわ。私はホッとしたわね。それと、この子いいやつって思ったわ。ニコニコしててね。あら、やだなぁ、私癒されたちゃった。
それからはその子と一緒に練習。二人とも持っていない部分を持っていたからそこを教え会いながら練習したのよ。ほら、私はスタミナと駆け引きが得意。彼女はフォームとテンポが得意。ほらね? お互いの得意を吸収したら良い感じでしょ? 速くもなるしね。
でも、なんだかここの陸上部って練習の効率が悪いのよね。人数の割にはインターハイ出てる人少ないし。先輩にここの練習ってこんなんですかぁ? て、聞いたら、そうだよ、てアッサリ返されちゃった。私が怪訝な顔してたのかな。先輩がクスって笑って、なら自分でメニュー考えてやればいいじゃん、別に良いのよ、ここでは、て言ってくれたの。
それからは中島さんと一緒に好き勝って練習してたわ。お陰で二人ともかなりタイムも伸びたし。まぁ、一ヶ月そこらじゃそんなに大幅に速くなったりしないけどね。
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